映画『君の名は』のレビュー評価

「何かを又は誰かを今も探しているような気がする」人生のある時点で、私たちは皆そう思ったことがあるのではないでしょうか?日常生活から抜け落ちたような感覚、そして普通の状態を取り戻せる何かを求める気持ちです。 

映画『君の名は』は、公開年、国内最高興行収入を記録した映画です。世界的にもアニメ映画として史上最高の興行収入を記録し、あの『千と千尋の神隠し』を抜いたことでさらに話題に。この大ヒット作品は、どこかにある何かを探し求めるという非常に共感を呼ぶ思いが描かれています。もちろんそれだけではありません。

可愛らしく、心奪われる作品で、最初は色々なことが起こりますが、次第に盛り上がりを見せ、心ゆすぶられるパワフルな結末へと向かいます。この映画ほど視覚的に魅力的なアニメ映画はないでしょう。

新海誠が原作者兼監督です。舞台設定はあのわざとらしい『フォーチュン・クッキー』もどきですが、『君の名は』には悲しみと誠実さがあふれています。設定はかなりシンプルです。三葉(上白石萌音)は女子高生で、飛騨地方の美しく静かな架空の村「糸守」に住んでいます。瀧(神木隆之介)は東京出身で少し年上の青年です。

二人ともそれぞれの仲間内ではごく普通の若者でしたが、都会と田舎、ともに美しい環境の中にあったせいか、彼らにはこれといったつながりはなく、互いにとても異なる生活を送っています。

ところがある日、瀧が目を覚ましてふと胸を見ると、彼の体が三葉の体になっていることに気が付きます。翌日、三葉は自分自身の体で目を覚ましますが、前日のことをはっきり思い出せません。もちろん全く同じことが瀧にも起こります。三葉と瀧は眠りから覚めた直後に、大抵は周囲の人々が彼らのふるまいが奇妙だと話をしているのを聞いて、互いに不規則に体が入れ替わることに気が付くのが常でした。

1980年代の前述のディズニー映画のような突飛な悪ふざけではなく、二人は力を合わせて互いを支え合い、体が入れ替わった時にどんなことが起こるかをメモや日記に残していきます。例えば、三葉は瀧が好きな女の子に敢えてアプローチしますが、これなどはやはり体の入れ替わりをテーマとする『シラノ・ド・ベルジュラック(原題:Cyrano de Bergerac)』にも似ています。

しかしある日、彼らが体の入れ替わりを避けたところ、瀧は三葉とどうしても連絡が取れなくなります。瀧は三葉の生活を思い出そうとしても、あいまいな記憶しか残っておらず、瀧は三葉を探しに出かけます。ここから『君の名は』という素晴らしい題名がつけられました。

『君の名は』は映像が美しいというだけではありません。新海監督とそのチームは鋭い描写力と詩的感性を持ち合わせています。大都市・東京の鉄道、空高くそびえる美しい高層ビルなど、『君の名は』を取り巻く背景は非常に現実的であると同時に神秘的です。糸守の果てしない地平線や山腹に連なる行く本もの山道さえ、どの背景を取っても額縁に入れて壁に飾りたくなるようなそんなアニメ映画の一つです。

とはいえ、この映画の見事な映像がストーリーを圧倒するようなことは決してありません。映像とストーリーは密接見結びついています。『君の名は』は、都会であれ田舎であれ、素晴らしい世界がそこにあり、私たちはただそれを見つけさえすればよいのだ、と語りかけているように思えることがあります。